月刊誌「みにむ」2001年5月号(4月14日執筆) 開倫塾の時間

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民営化を考える

開倫塾塾長   林  明夫

 民営化とは何ですか。
 (林 明夫・以下略)役所や役所の外郭団体でやっていることを民間人がやってよいようにすることです。
日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社が、それぞれJR、JT、NTTになったように、国有企業が民間企業になることです。

 具体的には、どのような手順で国有企業をはじめとする公の企業や事業体が、民間企業つまり民間人の手に委ねられることになるのですか。
 まず、「規制緩和」もっと激しく言えば、「規制改革」が必要となります。今まで、国や地方公共団体、外郭団体でやってきたことを、民間人がやってもいいですよ、誰でもその仕事に参入できますよという,「法令の改正」が必要となります。法律や条例の改正のためには、国会や地方議会の承認が必要となりますから、政治家がまず、民間人が公の仕事に参入してもよくするための「法的な規制を緩和ないし撤廃」する必要があります。
 規制を緩和したり、撤廃をすると、規制によって恩恵を受けていた人々の失業が生じますので、大きな社会問題となることも多く、ゼネストが行われることもめずらしくはありません。

 では、どうしたらよいのですか。
 「雇用を維持、確保しながら、必要な場合のみ民営化すればよい」と思います。そんなことができるのかいえば、難しいが不可能ではないと思います。民営化は、ハイエク先生をはじめとする小さな政府を目指す人々によって唱えられ、ドラッカー博士が具体的に提唱したものを、イギリスのサッチャー首相が、1980年代に国営イギリス航空などから始めたものであると言われています。もうすでに20年の歴史があり、日本でも国鉄などの歴史があります。
 国家財政、地方財政を破綻の危機から救う大きなツール(道具)の一つが民営化であることは「明確」ですし、民営化をどんどんすすめれば、公務員や外郭団体職員等の準公務員の失業も「明確」なので、この二つの難しい命題(課題)を解決しなければならないということも「明確」です。

 どうすればよいのですか。
 公務員や外郭団体職員等の準公務員の皆様に、民間企業人なみの、もしできれば民間企業人以上の「仕事能力」を身につけて頂くためのプログラムを戦略的に策定すること。
 今までは、収入を考えずに仕事をこなすことだけを考えていたのを、自らの収入は自らの手でかせぎ出すのだということを自覚し、一日も早く、そのための能力を身につけること。
 公務員であった人がこのようなことができるハズはないとあきらめてしまうと、ハナシはそこでおしまいになってしまい、ツケは、巨大な財政赤字(借金)となって子孫に残ってしまうだけとなります。
 既に行われた日本をはじめ世界各国での民営化には、成功例・失敗例が沢山あります。それらを素直な気持ちで学習すれば、公務員の失業問題をできるだけ回避した形での民営化は可能で、私は、失業者ゼロの民営化を目指すべきと固く信じます。

 次の問題は何ですか。
 様々行われる契約をはじめとする新たな商取引にどのように対処するかです。収入をどのように得て、支払いをどのように行うか、新しい業務をどのように行うか、普通の民間企業と同じような問題が次々生起します。
 大きな基本財産を伴うものが多いため、経営幹部や従業員の不正をどのように発見し、正しいものに近づけるかという「しくみ」づくりも大きく問題となります。コーポレート・ガバナンス(企業統治)、アカウンタビリティ(説明責任)、トランスパランシー(透明性)、などの現代企業に必要とされる経営論理(ビジネス・エシックス)が民営化された企業には、特に強く求められます。
 経営者や中堅幹部のリーダーシップ、一般社員のやる気を引き出し、能力を最大限発揮させるしくみづくりも大切となります。仕事に向けての動機を強めるための評価のしくみ、社員持株制度のスタートなど、現代企業経営に欠かすことのできない経営課題がそのまま民営化された企業にもあてはまります。

 どのような公共事業や公共サービスが民営化できますか。
 アメリカでは、刑務所の経営まで民営化されていますので、「聖域」は無いかも知れない、というのが正解かも知れません。
 国立大学や国立研究所が「独立行政法人」になりつつあるのも、民営化を目指してのことだとよく言われております(国立病院も同様)。公立学校の自由選択やチャーター・スクール、ホーム・スクール、スクール・バウチャーなどの少しずつの導入は、最終的には、義務教育の民営化のステップなのかも知れません。保育園などは、民営化直前とも言われております。赤字たれ流しの公営ギャンブルも、民営化すれば、以前のように収支が逆転して税収増が期待できるとも言われています。外国では、高速道路や港湾、橋、上下水道、飛行場など、日本では社会的なインフラと呼ばれているものも、民営化されていることがあります。図書館や体育館、音楽ホール、公民館、美術館、博物館などの文化施設はもちろん、公営アパート、職業紹介所、放送局、養老院なども民営化の対象とされています。
 つまり、民間の知恵を使って経営した方が、効率がよく、また、サービスしてもよいと思われるものは、参入障壁をできるだけ下げ、だれでも自分の責任で経営させようというのが民営化の考えかと思います。

 林さんは、どこで民営化の勉強をしているのですか。
 私は、4年くらい前に民営化の勉強が必要と感じました。そこで、1998年に、ワシントンD・Cにある世界銀行研究所で民営化研究コースを修了、1999年には、ボストンにあるハーバード大学行政大学院(ケネディースクール)国際開発研究所で、民営化研究コースを修了しました。
また、年に3〜4回は、各国政府との円卓会議に出席し、民営化担当の大臣等と意見交換をさせて頂いております。(イギリスの経済週刊誌主催の「エコノミスト・カンファランス」で)。更に、トランスパランシー・インターナショナルというドイツでは超有名なNGOが主催する汚職撲滅国際会議(アンティ・コラプション・カンファランス)に出席のため、一昨年は南アフリカのダーバンにまで出かけてしまいました。日本でも4月11日に「トランスパランシー・インターナショナル」の日本での第一回目の会議が東京都神田の一ツ橋大学記念堂で開催され、私も出席させて頂き、企業経営における「透明性」の重要さを再認識しました。

 民営化の勉強は面白いですか。
 私は小さな会社ではありますが会社の経営者ですので、何万人もの職員を擁する公営事業体を民営化するプロセスの勉強は、ゾクゾクするほど面白いというのが本音です。民営化の勉強のお陰で、規制緩和(最近では規制改革といいます)、雇用の維持(安定)、企業統治、説明責任、透明性、果ては、汚職の問題をかなり掘り下げて勉強することができました。会計やマーケティング、リーダーシップ、やる気の引き出し方、研修制度などMBAコースで勉強するような内容も、もしかしたらMBAコースに出る以上に勉強させて頂いたかも知れません。余り成果は出ていませんが、経営者としての勉強を民営化の勉強を通してさせて頂き、有難いと思っています。

 どのように民営化の勉強をすればよいのですか。
A 今年の6月25日からプリンストン大学で3週間のコースが開かれますので、そこに参加するのがベスト(但しすべて英語)。あとは、休みの日にでも、東京駅の八重洲口にある八重洲ブックセンターに行き、民営化と題する本を何冊か買い込み、何ヶ月かかけて読み終えた上で、気に入った著者を直接訪問し教えを請うこと。新聞や雑誌の民営化の記事をスクラップし続けること。
 勉強は不足していますが、私自身も民営化について今秋から勉強会を開きたいと思っていますので、もしご興味のある方はFAXでご連絡下さい。(0284-73-1520)。

 最後に一言どうぞ。
A 福田昭夫栃木県知事の諮問機関である「栃木県IT・経済戦略会議」の14名の委員の1名に私が選任され、この4月から1年間栃木県の経済政策を考えて、知事に諮問させて頂くことになりました。
 読者の皆様の中で、栃木県のIT(情報技術)について、また、経済についてどのように戦略的に考えたらよいか、ご意見のおありの方は、是非お聴かせ頂きたくお願い申し上げます。(FAX0284-73-1520 〒326-0831 足利市堀込町145 開倫塾 ・ 林明夫宛、文章でお寄せ下さい。)多くの皆様からご意見を聴かせて頂いた上で戦略会議に臨みたく思います。
 汚職・腐敗を撲滅するためのNGO「トランスパランシー・インターナショナル」にご興味のある方は、www.transparency.org をご参照下さい。日本支部のできる動きもあります。
 民営化に限らず一つの分野を勉強し始めると、次々と関係のある分野も勉強せざるを得ず、少しずつ世界が広がることがあります。知り合いも少しずつ増え、世の中には随分いろいろな考え方をする人もいるのだなあと感じることもあります。もう何年かすると、国でも地方でも財政が悪化すればするほど民営化は避けて通れなくなります。今の内にみんなでしっかり勉強しましょう。
                                        (4月14日記)

                                                        

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